本研究の着想に至った経緯の書き方 (科研費)
目次
はじめに
秋といえば研究者にとっては,科研費の季節です.
申請書(研究計画調書)の作成に悪戦苦闘し,精神的に消耗されている方が多いのではないでしょうか.
特に「本研究の着想に至った経緯」の箇所は「本研究の学術的背景」の項目と類似していて,とても書きにくい状態になっていますので,”書き分け方”に焦点を当てて,自分なりの書き方のコツを紹介してみたいと思います..
ことわっておきますと,私自身は新米の研究者です.今年はじめて科研費(スタート支援)に応募して,それがたまたま通っただけの若輩者です.また医学系ではない研究分野では,どこまで役に立つ内容になるのかは不明ですが,少しでも参考になるところがあれば幸いです.
「本研究の学術的背景」の書き方(前座)
科研費申請の最初のページには研究計画を書くことになっていて,
冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、について具体的かつ明確に記述すること。
科研費申請 研究計画調書
を書かなければいけません.これは普段の研究のイントロと同じように,
- 大きなクエッション(Q)
- Qについて既にわかっていること
- 逆にまだわかっていないが,Qを解き明かすために,これからやるべきこと
のような内容を素直に書いていくのがいいと考えています.
具体的には,
(1) 本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」
→ 大きなQを述べる (Qを解明する科学的・社会的意義を中心に)
(2) 本研究の目的および学術的独自性と創造性
→ Qについて既にわかっていることを述べてから,本研究の目的を書く
(対比効果で独自性を引き立てる)
(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか
→本研究の目的を深く掘り下げて説明(適宜,図表など用いる)
という形で書き分けを意識していました.
「本研究の着想に至った経緯」の書き方(メイン)
先ほどの「本研究の学術的背景」は,要約すると,
大きなQ→既知の事実→本研究の目的
を記述しています.
「本研究の着想に至った経緯」で,この流れと同じようなことをまた書いてしまうと
- どこが重要か分からなくなる
- 文章の展開がスローになる
- 読んでいて苦痛
などのデメリットが出てくるため,不採択になってしまうリスクが大きくなると思います..
よって,別の内容を書きたいところです.
ここでおすすめしたいのは,
大きなクエッション(Q)に対する別のアプローチを述べて本研究と対比することです!
換言すると,「Qにおける周辺分野の言及と本研究との関連」になります.
具体的には,
- 大きなQに対するアプローチとして,A’などの研究(テーマ)がある.
- A’によって大きなQは部分的に明らかになっている
- しかし,このアプローチだと△△△の視点を追求することはできない
- よって,本研究を行うことで,大きなQに解明により近づくと着想
という流れがオススメです.
「関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」との書き分け
「本研究の着想に至った経緯」の後は「関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」を書く必要があります.
ここも内容が被りやすく書きにくいところです.
関連する国内外の研究動向では,
研究分野の大きなQ→既知の内容→本研究の目的
の大きな流れの中で,
既知の内容(直結する先行文献)を深く掘り下げるのが良いと思います.
本研究の位置づけでは,
本研究を行うことにより大きなQが進み,科学的・社会的に意義が大きいことをアピールするのがいいと思います.
他のおすすめサイト・本
本記事では科研費の研究費申請の中での,本研究の着想に至った経緯」の項目に焦点を当てて書きました.
研究費申請についての他の箇所の書き方のコツとしておすすめのHPは,
科研費.com です!
特に,採択/不採択になった申請書(研究計画調書)を取り上げているページがあり,書く際のイメージが湧きやすくなると思うので,良かったら覗いてください.
あと,科研費の申請についての本もいくつかあり,本屋さんで見て気に入ったものを参考にするのも良いと思います.
私は,科研費 採択される3要素 第2版 (著:郡 健二郎)を購入して書く際の参考にしました.
メリットとしては
- ・カラフルで見やすい
- ・各項目で何を重要視して書けばいいかヒントが書いてある
- ・若手が書いた申請書の具体例を取り上げ,赤ペンで書いて添削
- (やってはいけない書き方を知ることができる)
デメリットは,ずばり
- ・本が書かれたのが2017年であり,最新の要綱に沿っていない
本記事でも取り上げた「本研究の着想に至った経緯」も新しくできた項目なので,この本で情報を集めることはできません.
ですので,この本だけで全て対応可能とは思わない方がいいです.
おわりに
科研費の審査員は,全国から集められた申請書を,自分の研究時間を削って読んでいる状態です.
似たような内容をそれっぽく書いているだけでは,印象に残りにくく,結果として採択されにくいです.
「書き分け」「流れ」を意識して,読むのが楽しい内容に仕上げるのがいいと思います.
最後まで読んでくださりありがとうございました!