交互作用と交絡因子

疫学 統計

今日のテーマは交互作用と交絡因子です.

似たような言葉で交絡因子があり,ごちゃまぜになることも多いので整理しておきましょう.

両者の用語をきちんと対比して理解するには,因果関係(≒ 哲学的なこと)まで踏み込んで考える必要があります.図にしてまとめてみました.これから詳しく説明します.

交互作用

まず,交互作用(Interaction effect)について.英語をみるとわかる通り,「相乗効果」と考えてもらっても大丈夫です.

突然ですが,似たような作用を持つ薬Aと薬Bがあったとしましょう.

血糖降下薬や降圧薬などでイメージしてください.

例えば,

・薬なしの場合,血糖は変化なし.

・薬Aのおかげで血糖が10下がる.

・薬Bのおかげで血糖が15下がる.

・薬Aかつ薬Bを同時に服用した場合は血糖50下がる.

となった場合,薬Aと薬Bの相乗効果(交互作用)が正の方向に働いていると考えられるでしょう.

BなしBあり
Aなし015
Bあり1050 (25上乗せ)

血糖が下がる数値を表に載せています
・無しを基準に有りの効果を見たいので,「なし/あり」の順で載せています

逆に

・薬Aかつ薬Bを同時に服用した場合に血糖は20しか下がらない.

などの場合は,薬Aと薬Bの相乗効果(交互作用)が負の方向に働いていると考えられます.

もう一つ,交互作用の例を考えてみましょう.

ある降圧薬Cがあります.

・男性がCを服用すると血圧が10下がる.

・女性がCを服用すると血圧が30下がる.

場合,これも交互作用があると言えます.

なぜかというと,

・女性かつCを服用している場合,血圧が30下がる(相乗効果で10下がる),と考えることもできるからです.

CなしCあり
男性010
女性030

血圧が下がる数値を表に載せています
・無しを基準に有りの効果を見たいので,「なし/あり」の順で載せています

つまり交互作用は,集団の中で,ある変数の有無(性別,内服薬,基礎疾患など)によって効果が異なる場合に認められることになります.

補足ですが,効果というのは,上記の例の血圧の値だったり,オッズ比やリスク比などの要約指標だったり,で考えてもらえれば大丈夫です.

交絡因子

交絡因子は,国試にも出たりしますので,結構知っている方も多いと思います.実は,正確に勉強するには,反事実(counterfactual)の概念を持ち出さなければいけないのですが,ほとんどのケースで考える必要がないので,ここでは,省略することにしましょう.

代表的な例は,コーヒーと肺がんの関係でしょうか.例に基づいて説明していくことにします.

・ある研究で,コーヒーを飲むと肺がんになるリスクが大きくなると報告があったとします.

・しかし,コーヒーと喫煙には相関関係がありました.(コーヒーを飲む人は喫煙する割合も大きい)

・実は,喫煙こそが肺がんをきたす原因であったことがわかりました.(交絡の存在)

・コーヒーと肺がんの間には報告されたほどの因果関係はありませんでした.

・このときの喫煙,は交絡因子になっています.

ちなみにこの因果関係はコーヒーのところをパチンコなどに変えたりしても成り立ちます.パチンコが肺がんを引き起こす直接の原因になるとは,生物学的に考えにくいですよね.

両者の違い,比較

交互作用と交絡因子,似ているようで,たしかに違いそう.

比較をするにあたり,よく言われているのは,

・交互作用は,変数によって効果が異なるか検出すべきもの

・交絡因子は取り除くべきもの

と言われることが多いです.基本的な比較はこれで十分かもしれません.

ただ個人的には,これだけだと本質までたどり着いていない気がしますので,補足します.

・交互作用は,変数によって効果が異なるか検出すべきもの.

交絡因子は,真の因果関係について追求するもの.

さきほどのコーヒーと肺がんの例ですと,喫煙の有無によって,コーヒーの肺がんに対する効果が変わることにフォーカスしたければ,交互作用となります.

逆に,降圧薬C自体は効果を持たず,性別が原因で血圧降下という結果が決まるのではないか.と検討する場合は,性別を交絡因子と捉えることもできます.

ただ,生物学の背景知識をもとに考えると,コーヒーよりは喫煙こそが重要な因果関係と考えるのが本質的でしょう.

また薬剤の例についても,背後の性別の交絡因子の介在のもとで降圧薬Cの効果があるように見えるだけで,実は無関係かもしれない,などと考えるのは少し不自然ですよね.

ということで改めて,下の図を載せます.この図に沿って考えていけば,混乱することなく,考えることができるのではないでしょうか.

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